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  • 2014.02.19 Wednesday
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ヒッキーPを一言で表す

 
ヒッキーPを一言で表します。


 その為にまず、そもそも僕がVOCALOIDのどういうところをおもしろいと感じているか、話をさせてください。
 惹かれる理由は無数にありますが、そのほとんどは以下の二つを発端として説明することができそうです。

■ いろいろなバックグラウンドを持ったアマチュアが作詞・作曲者として集まっている
■ VOCALOIDの歌声は非人間的で無感情なので、歌詞の意図がボーカルに留まらず作者が持つものとして聴ける

 一つ目はVOCALOIDを語る上で説明不要にして絶対不可欠の要素です。不可欠なのにこの点を欠いてVOCALOID文化を語っている書籍等を見ると、訝しんでしまいますね(僕はこういう風に、ただの主観を客観論のように断言することは、すごく"今風"だと思っています)。
 やはり音楽がアマチュアの手にわたったまま広まったのが良い。アマチュアは、音楽のプロである作曲家に楽曲の緻密さではとても敵わない。でもそれがどうした、と堂々と言えるようになったのが良い。たとえばプロのとび職がヘタクソな作曲技術をもってして作った音楽は、とび職らしさの点で作曲家に勝る。アマチュアはプロに勝る面を持っているんです。それを示すことができた。
 世の中には音楽を崇高なものと思っている人がいるようで、「音楽は音楽であり音楽以外の何物でもない」というような趣旨の主張をよく見ます。すごく身近にしてタイムリー(?)な主張の例を出せば「インスト曲を作っても無視されてきたのにVOCALOIDに歌わせた途端"神曲"と呼ばれるようになった。むなしい。俺は音楽を聴いてほしい」といったような。
 おかしいですよ。音楽に付加情報があるのは当たり前です。付加情報まで込み込みで音楽でしょうよ。聴覚情報から、聴覚で感じる以外の情報を頭の中で想起したとしても、その付加情報こそ音楽の一部、あるいは音楽そのものです。歌詞だって付加情報です。「音楽についてる歌詞というやつは耳で感じるものではないから色物」だなんて意見はないでしょう。「高級な○○というピアノが醸す空気感」だって付加情報。あえぎ声にも聞こえる色っぽいボーカルだって付加情報。録音した雨のSEだって付加情報。VOCALOIDだけ色物、だなんてことはないです。なんですか純粋な音楽って。純粋な音楽なんてものがあるとすれば、我々が日本で育つ間に見聞きしてきた、親の小言とか教科書の解説とか上司の理不尽とか、そういった文化のドロドロが全部流れ込んで純粋な音楽が作られるんですよ。
 だから、とび職要素のたっぷり詰まった音楽は、その部分だけは間違いなく「音楽」として優れている。「とび職っぽさは伝わったけど音楽としてはヘタクソ」そうじゃないんです、分けてはいけない、笑っちゃうくらいヘタな旋律も含めて、音楽なんです。これは個人のヒステリックな主張ではなく、ただ『音楽と聴覚情報から想起される情報とを切り離すことはできない』ということを確認しているに過ぎません。
 プロの作曲者では到底思いつかない音楽の付加情報を、アマチュアはみんな持っているんです。アマチュアはみな、それぞれ何かしらのプロです。たとえ職業上のプロでなくても、それぞれの人生のプロです。いいじゃないですか。楽曲の緻密さで負けても、人生で得てきた情報を付加させた「音楽」で負ける道理はない。
 VOCALOIDは、アマチュアでも音楽を聴いてもらえる土壌をかつてない規模で作ってしまったので、そのことをこっそりと証明してきて、これからもどこかでこっそりと証明しつづける。だから好きなんです。

 二つ目の話。語られるところでは語られているのでしょう、VOCALOIDの透明性の話。これは音楽における大発明だと思いますよ。
 これまでの歌モノの音楽は、歌が大きかったんです。音量の話ではありません。歌詞の意図が、まったくすべてボーカル(ボーカリスト)に集中してしまっていたということです。人が歌うから、その歌は、その歌詞は、その人の言葉になる。それは仕方ない、というか、当たり前すぎて他に仕様があるか誰も考えすらしなかった。それがVOCALOIDの登場によって、ことは完全に変わりました。どう変わったか。どうにも抽象的なので、いろいろな書き方をします。「歌詞がボーカリストの言葉ではなくなった」。「歌詞を書いた意図を見る方向がボーカリストを透けて、作詞者に向くようになった」。「歌詞に関してボーカルに責任がなくなった」。「歌詞が放つリアリティはボーカリストのものではなく、作詞者のリアリティとして扱われるようになった(作詞者の存在は聴覚情報には表れ得ないにも関わらず)」。どれかしっくりとくる言い回しがあったでしょうか。
 人間のボーカリストが、たとえば「ゴミとユーモア 寄せ鍋にして現実に立ち向かおうとした」という歌詞を歌い、我々がその言葉にハッとしたとすると、いったい我々の心を打ったのは、誰のリアリティになるのでしょうか。やはりどうあってもボーカリストのものであり、作詞者の存在は意識すらされません。逆にそうであるように"歌に合った"ボーカリストが選ばれてきました。ではここで、先ほどの歌詞をVOCALOIDが歌い、我々の心が打たれました。さて心を打ったのは誰のリアリティだったのか。誰の言葉なのか。考えるまでもありません。「歌詞の意図がボーカルを透ける」とはそういう意味です。初音ミクは名実ともに無感情なものだから、視聴者に『作詞者の伝えたいリアルが歌に乗ってダイレクトに届く』。これはすごいことですよ。この点においてはボーカルでありながらまさにインストゥルメントです。つまりギターの音から激しい怒りを感じることがあってもそれはギターの怒りではなくギタリストの怒りである、といったことを、これを歌でも再現してしまった。歌に乗っている言葉の思いと、ボーカルが、分離している。これは人の声では成し得ない。「私は作詞者の代弁をしています」といった謙虚さを出しながら歌うことは、人間が人間である限り不可能でしょう。

 ではその非人間性が可能にする"代弁"のメリットは何か。それは上記の、僕がVOCALOIDに惹かれる理由の一つ目と組み合わせて考えていただきたいです。この界隈には、さまざまな人生を歩んできた人たちがいます。漫画家がいます。建築家がいます。中学生がいます。無職がいます。手タレもいます。さまざまな種類の人間が集まって歌を作る文化が形成されるためには、さまざまな種類の人間が表現したい音楽を、そのままの意図で歌に乗せる必要があります。非人間性が可能にする"代弁"は、もはやメリットどころではなく、エッセンシャルだったと言うべきです。

 僕はVOCALOIDの声は透明だと書きました。歌詞を歌に乗せているのに作詞者の意図をそのまま伝えることができると書きました。ここに一つ、さらにVOCALOIDのおもしろい点を挙げます。VOCALOIDは、透明は透明でも、半透明になることができる、という点です。半透明とはどういう状態か。それは、人間と合成音声の、まさに"中間"です。
 誰しもが、初音ミクの声を、あるいはそれより後発のVOCALOIDの声を聴いて音声合成技術の進化を確認した後は、今後の展望を予感したはずです。つまり「このままVOCALOIDが進化すると人間の声と聴き分けがつかなくなるときが来るのかな」です。そんな時代がくればおもしろいでしょう。
 でも実は、いま、今が一番おもしろいんです! 今はまさに、"中間"なんです。人工物が人間的に思える、不気味な、言語化されない感情を一番に刺激している"中間"が聴ける! VOCALOIDのくせに、正弦波の足し合わせのくせに、"感情"を意識してしまう。この人工音声と肉声の"中間"とは何か、ということを言語化し理論化・体系化するためのサンプルが! つまり「やけに人間くさく聞こえる合成音声」が! たくさん転がっている今がすごくおもしろい。
 VOCALOIDの歌です。本当ならば感情のない歌声です。それでも我々は、このピアノの音をやさしいと感じます(奇妙な話ですね)。また、「だいじょうぶ」という言葉のやわからさ、あたたかさを知っています。だからなのでしょうか、VOCALOIDの感情のない音が、そういった要素に染められて、あたたかく、やさしく聞こえるようです。そしてそうした気持ちで歌を聴いていると‥、突然、2:45-に仕掛けられた、本来ギミックと呼ぶべき合成音声の変調に、明確な"人間的な感情"を意識せずにはいられません。感情など生まれようのない合成音声から、やさしさ、せつなさ、かなしさ、そういった感情を想起せずにはいられまん。
 さてVOCALOIDの歌声に人間的な感情を意識した途端、次の問いが生まれます。『この擬似的な感情が発するリアリティは、誰のリアリティなのか』? 我々はいったい、先ほどの歌を聴いたとき、どういう聴き方をしていたのでしょうか?歌声に乗せられた感情によって、作詞者の思いの強さが高まりましたか、それともついに、VOCALOIDに魂が宿ってしまい、「初音ミクさん」の実在を感じてしまいましたか? 今の今まで、VOCALOIDは透明であり、作詞者の心を投影していたにも関わらず、一転してVOCALOIDの歌声に感情の種を認めてしまうと、透明性が薄れ、歌詞の意図や責任が分散し、まだ言語化されていない感情が刺激され整理が追いつかないような心持ちがしたのではないでしょうか。もはや若い世代の少なくない割合は、一切の他意なく堂々と言ってしまうかもしれませんね。「VOCALOIDにも感情はある」と。

 「歌声の透明性(半透明性)」という概念について、確認とともに整理します。
 我々は人間の歌声に感情を意識します。その感情のリアリティは100%ボーカリストが有するものと我々はとらえます。作詞者の意図は流れてきません。
 一転して、VOCALOIDが透明な歌声で歌うと、感情のリアリティをボーカリストが有する率は0%となります。そしてその分、作者が100%負うこととなります。
 その中間が半透明性をもつ歌声です。VOCALOIDの歌声から感情を意識してしまうと、その感情のリアリティを有する率が、VOCALOIDと作者ともに、0か1かで測れなくなり、ぼやけてしまいます。この中間のぼやけこそが、誰も言語化・理論化・体系化に至っていない分野であるため、今、とってもおもしろい。

 VOCALOIDが感情を持ったかのように歌っていると、何はともあれおもしろい。上の動画「だいじょうぶ」では、やさしさ、あたたかさ、かなしさなどの感情を垣間見ることができました。では、他の感情だとどうなる? もっと強烈な感情は? いったいどんな感情を持つ歌声があるの? もっとサンプルが欲しい! ここで出てくるのがヒッキーPです。


 初音ミクの発売から五年以上経ちます。これまで数多くの人々が、VOCALOIDをいわゆる"調教"などによって人間の歌声に近づけようと努力してきました。それがVOCALOIDの進化であると考えたからでしょう。これは、先述の「音声合成技術の発展の末には人の声と聴き分けがつかなくなる」という発想に基づいています。その努力に大きく立ちはだかる壁が、シャウト、叫びでした。それもそのはず、VOCALOIDエンジンのどのパラメータをいじっても、「喉をつぶす」という設定にはならないからです。VOCALOIDの音声を、いかにして人間が喉をつぶした声に近い音となるようにエフェクト処理をするか、多くのノウハウが共有されてきました。
 さて、僕はヒッキーPほど「叫び」をVOCALOIDで表現することに成功した人を知りません。ヒッキーPがVOCALOIDに叫ばせるアプローチは特殊です。1サビの終わりを聴いてください。声は次第に割れて、出力できる周波数が圧倒的に絞られ、そして、"ほとんど単音になってしまう"。これです。強い感情を表すアプローチが、従来の『人間なら感情が高ぶれば喉がつぶれるので、その音に似せる』ではなく、『機械なら強烈なアウトプットに耐えられなければ故障するので、出力帯域を限定する』となっているのです。そうなっているように僕には聞こえます(予防線)。
 注目すべきは、VOCALOIDをVOCALOIDとして、あくまで非人間として扱っていることです。その上で、鏡音リンに感情を与えて、故障させている。そうしなければ、ヒッキーPには、むしろリアルな叫びに聞こえなかったのでしょう。はたしてそれは成功し、見事強烈な感情の高ぶり、VOCALOIDの叫びを実現しています。
 ‥あれ? 待ってください。確認しないと忘れそうになりますね。合成音声に感情なんてものはないんです! もう一度、先ほどの問いに戻りましょう。VOCALOIDの歌声に感情のようなものを感じたとき、その感情の本当の持ち主は、作詞者でしたか、鏡音リンさんでしたか? いったい、どういう聴き方をしましたか? 僕が今この曲を提示したのは、これが"半透明な歌声"の強烈なサンプルであるからです。半透明のサンプルになり得る条件は、VOCALOIDの歌声に感情を意識してしまうことでした。このサンプルは、僕が知り得る限り、最も強烈な歌の中の一つです。ヒッキーPは、VOCALOIDがくすぐってくれる好奇心を最大限に生かせる男なのです!

 本当ならば、
> ■ いろいろなバックグラウンドを持ったアマチュアが作詞・作曲者として集まっている
に関連したヒッキーPのVOCALOID界隈への貢献について書きたいことはあったのですが、「ヒッキーPを一言で表す」という趣旨であったため、半ばながら、以上5,800文字を持って一言とさせていただきます。続きは酒の席で。






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